【ビジネス】「空飛ぶ車」のまとめ(eVTOLの開発企業や現状について)

こんにちは、とびすけです。

今回は「空飛ぶ車」産業をまとめてみます。
小さいころに「スターウォーズ」や「バックトゥザフューチャー」を見た僕としては”待ってました!”って感じる待望の技術です( *´艸`)

まぁ映画と比べるとまだまだ未熟な技術ですし、僕たちにとって身近な乗り物になるにはもう少し時間がかかりますが、それでも実現に向け真剣に取り組む企業やエンジニアがいるのは事実です。

それでは、関心のある方は是非ご覧ください!

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これまでの経緯

そもそも「空飛ぶ車」という概念自体は新しいものではないですし、昔からSF小説や映画などに度々登場してますよね。
”近未来”を思い浮かべる時に、あるいは真っ先に出てくるキーワードかもしれません。

そんな未来の乗り物がここ数年で一気に現実味を帯びてきました。
その背後にはおそらくドローン技術の進歩があるのかなと思います。

もともとドローン自体は、電子レンジやGPSがそうであるように、軍事利用が目的で開発されたもので、その起源は第二次世界大戦だそうです。
ですが、その技術は農薬散布用ドローンなどに応用され少しづつ産業用途にシフトしていきます。

現在では農業だけでなく、カメラやLidarを取り付けて測量や保守点検に使われていますし、テレビの空撮もヘリコプターではなくドローンに置き換わっていますね。
また、近年では物流でもドローンの開発が進んでいます。

コンシューマー用のドローンで言えば、中国で2006年に設立されたDJI社が有名ですね。
2020年3月時点において、世界のコンシューマー向けドローン市場の約70%を占めており、他に5%を超える企業がいないことを考えるとまさに一強です。

そんなDJIに追いつけ、追い越せと設立された多くの会社の中で注目なのが2014年に設立されたEhang(イーハン)社でしょう。
彼らも最初はDJIと同じくコンシューマー向けドローン市場に焦点を当てたビジネスに注力していたものの、旅客用ドローン企業となるべく大きく舵を切りました。

そして2016年1月のCES(Consumer Electric Show)で世界初となる自律型航空機(AAV:Autonomous Aerial Vehicle)「Ehang 184」を発表しました。

Ehang 184

このEhang 184は一人用でしたが、約100kgの積載量、20~25分の飛行時間、時速130kmとまずまずの性能をもっていました。
さらに特筆すべきはこれが自律型であり、搭乗者は操縦する必要がない点です。操縦する場合はヘリコプターのように免許を取る必要がありますが、これは自律飛行のため搭乗者に免許は不要です。
実際の飛行映像は以下の動画をご覧くださいな。

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On February 6, EHang announced that the EHANG Autonomous Aer…

さらに現在で二人乗り用のEhang 216が開発され、世界の主要都市で何度もテスト飛行が行われています。

他方、Googleの創業者の一人であるラリー・ペイジが出資していることで有名なKitty Hawkと航空機製造会社であるボーイングによる合弁会社であるWiskが開発した「Cora」やドイツのVolocopter社も注目です。

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Get a closer look at Cora, the self-flying, fully electric a…

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Autonomous flight in cities is coming very soon – we are wor…

こうした乗り物は上述したように”AAV”と呼ばれることもありますが、それ以上に”eVTOL”とまとめられることがよくあります。
VTOLは垂直離着陸機(Vertical Take-Off and Landing aircraft)の略ですが、代表例を挙げるとヘリコプターがあります。

ヘリコプターは内燃機関により動いていますが、これをバッテリー(電気)で動かしているものがeVTOLであり、電気を使っているため頭文字に”e”がついています。

いくつかYoutubeの動画の張り付けましたが、それをご覧いただければある程度技術的な完成度は高まっていると言えそうですね。
少なくとも夢物語だと笑われるような領域は脱したように思います。

他方、それでも安全面や価格面の課題は山積していますし、なにより実際に運用する際の規制や制度なども国レベルで整えていかなければなりませんね。
例えば、免許はどうするのか?管制システムはどうするのか?といった部分は企業の責任を超えています。特に高層ビルが立ち並ぶ先進国の都市部では導入が非常に難しいのではないでしょうか。
実際、小さなドローン一つをとっても東京都心部では飛ばすことが航空法で禁止されているくらいですからね。

キーテクノロジー

Youtubeをご覧いただいた方であれば、”え、もう人を載せて飛んでるじゃん!”と思われた方も多いと思います。
デロリアンのような形(車の延長線上)とは似ても似つかず、どちらかというとヘリコプターのコクピットのようではありますので残念に思われる方もいるかもしれませんねw

さて、それではちょっと未来を覗いてみましょう。
皆さんご存知の配車アプリでお馴染み”Uber”ですが、彼らも「空飛ぶ車」、「空のライドシェア」という分野を本気で考えていました。
”Uber Elevate”と名付けられたその事業でコンセプト動画を出しているので紹介します。近未来の”人のモビリティ”をわかりやすく映像化していますよ。

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Conheça o primeiro vídeo da Uber que mostra como serão as vi…

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Uber's vision for eVTOL urban air mobility, unveiled in June…

しかしながら、上記で「本気で考えて”いました”」と過去形を使ったのは、彼らはすでにUber Elevateの研究開発部門を手放しているためです。
2020年12月、彼らは空飛ぶ車「Uber Air」を共同開発していたJoby AviationにUber Elevation事業を売却しました。これは、本業のタクシー配車事業がコロナによる外出規制の影響を受け収益悪化となったためと言われています。ですが、売却先のJoby Aviationはこの業界では非常に有名で、2020年1月にはトヨタからも400億円を超える出資を得ているほどですので産業が衰退することはないと思いますが、UberのようなBig Nameが消えるのは少し寂しいので、早く本業を立て直して戻ってきてほしいものです。

さて、動画のように空飛ぶ車が日常化することは非常に待ち遠しいですが、それを実現するために達成しなければならないいくつかの課題を紹介します。

管制システム(UTM:Unmanned Traffic Management)

管制システムというと飛行機や空港を連想する方も多いと思いますが、まさに”それ”です。
空港にある管制局は空を飛び交う飛行機と通信を行い、衝突事故などを未然に防ぐための交通整理をすることで、”空の安全”を実現しています。

これと同じシステムを空港ではなく、僕たちが普通に暮らす街でも運用しなければなりません。

というのも、今後は空飛ぶ車、物流用のドローンなどが街の上空を飛び交い、それに加えてこれまで通りのヘリコプターも同じ空を使うわけですね。
これまでの”空”はある意味がら空き状態でしたので、ヘリコプターの操縦士は目視で安全を確認すれば十分でしたが、ドローンなどが飛び交うようになれば目視では追い付かなくなります。

つまり、空港の管制局と同じく、街の上空に対しても管制システムを整備して、お互いが衝突することを防がなければなりません。
UTMのコンセプトについては以下の動画(英語ですみませんが、イメージはできるかと・・・)が分かりやすいと思います。

YouTube

Unifly is world leader in UAS Traffic Management (UTM). Our …

YouTube

Learn more about Unmanned Traffic Management (UTM), and how …

このUTM自体はすでに開発が進んでおり、日本では「JUTM」という組織が主導しています。

おそらく最初は災害現場などで活用されるのではないかと思います。
例えば大きな地震が起きた際、基本的には立ち入りが厳しく制限される災害現場ではドローンがよく活用されます。これは人命救助という側面(生き残っている人を見つける)だけでなく、測量の面もあります。
土砂崩れが起きた際など、土砂崩れの前と後を比較してその体積をざっくり計算し土を移動するのにトラック何台分で何日くらいかかるのかを把握するためなどですね。

さらに救命救急のヘリコプターも同時に飛び交う中で、互いが衝突すれば大きな事故につながるため、災害現場のUTMは非常に大事な技術になります。
こうした特定の条件下での活用をベースとしつつ、物流ドローンや空飛ぶ車が実用化された将来に向けたUTMを整備しなければいけませんね。

分散型電気推進力(DEP:Distributed Electric Propulsion)

従来のヘリコプターであれば、単一のローターが回転することで揚力を得て飛行していたが、「空飛ぶ車」は複数のプロペラにより揚力を得ています。
この理由は、プロペラの数が多いほどエネルギーを効率よく使えるためらしいですが、その分複雑な制御が要求されます。

上空では風の影響を受けた際などミリ秒単位(1秒の1000分の1)で出力を調整しなければならないそうですが、そうした制御は人間の能力を超えているためコンピューターに依存しなければなりません。
つまり、フライ・バイ・ワイヤ方式(コンピューター制御)となります。

ひと昔前であれば、そのような高い性能をもったシステムを作るだけでも長い時間と莫大なお金を使わなければなりませんでしたが、いまでは機械学習やAIの技術が急激に進歩しており、そのおかげもあって技術的難易度が下がってきています。様々なセンサーから得られる情報を処理し、それをアウトプットする高性能なシステムにより安全性の高い「空飛ぶ車」を実現しようとしています。

他方、バッテリー(蓄電池)の技術進歩も「空飛ぶ車」の実現に一役買っています。
近年の太陽光発電や電気自動車の普及によりバッテリーの性能も日進月歩で発展しています。

例えば電気自動車世界最大手のテスラは2020年9月に大容量の電池を発表し業界を驚かせています。一方で、2021年1月にイスラエルのStoreDot社は、通常フル充電に8時間程度かかるとされる電気自動車だが、給油と同程度の5分で充電できるバッテリーを開発したと発表しています。

「空飛ぶ車」でも航続距離や充電時間を考える際に、バッテリーの性能は非常に肝となります。そしてバッテリーの性能はDEPとも深くかかわってきます。
他産業で培ったバッテリー技術を上手に転用することで、「空飛ぶ車」の実用化も着実に近づいてきている印象ですね。

価格

管制システムやDEPなどの技術的な課題が解消されたとしても、料金が高ければ大規模な普及は望めませんね。せいぜいが大富豪の娯楽といったところです。
ですが、それが自動車を所有するよりも、街中を走るタクシーよりも安く、早く、快適に目的地に連れて行ってくれる代物なら話は別ですね。

例えば自動車を所有している人は、自動車の購入代だけでなくその維持管理に年間どのくらいの費用がかかっているのか、だいたいの予想はつきますか?
いまでは、特に都市部に住む若い世代を中心に自動車の所有離れが進んでいるそうなのであまりピンとこない方も多いかもしれません。

アメリカ自動車協会(AAA)によると、年間10,000マイル(16,000km)走る人の場合1マイル(1.6km)あたり0.82米ドル(約85円)の費用が掛かっています。
別の見方をすると、2020年に新車を購入した場合、年間平均9,561米ドル(約100万円)の費用がかかるそうです。これには保険料、ガス代、メンテナンス費用、税金など自動車購入代金以外の維持管理費も含まれます。

日本の場合でも、自動車購入代金を考慮しない場合年間40~50万円程度の維持管理費がかかるそうです。(月間走行距離:800km)
仮に自動車購入代金が200万円で、それを5年使ったあと50万円で売却する場合は、年間当たりの費用に直すと30万円ですね。なので、維持管理費に購入代金を足すと年間約70~80万円程度かかることになります。
これは月間800km走った時の費用なので、1km当たり約75円程度かかっていると言えますね。1マイル当たりに直すと120円なのでアメリカより日本のほうが高いみたいですね。

さて、それでは「空飛ぶ車」はどうでしょうか。
その前に、参考としてヘリコプターを見てみましょう。ヘリコプターの場合、1マイル当たり8.93米ドル(約935円)かかるとの調査結果があります。
やはり自動車に比べるとお金持ちの乗り物ですね。「空飛ぶ車」がヘリコプターに勝つためには少なくともこの金額を下回らないといけません。

そして、Uberは以前「空飛ぶ車」を1マイル当たり約1.84米ドルまで下げることを検討していました。
これはヘリコプターに対してはかなり競争力がある価格ですね。Uber自体はすでにeVTOL事業を売却しましたが、市場はこうした価格帯を期待していることでしょう。

一方で、自動車の価格と比べると依然として高いです。
Uberは同じ発表内容の中で、ゆくゆくは自動化や大規模化により1マイル当たり0.44米ドルまで下げることができると言っています。
これは例えば、大量生産により機体の価格を下げることや大規模化により乗員を4名程度にまで増やすことをベースにした検討だと思います。
今の技術では2名程度が限界かもしれませんが、技術が成熟するにつれこうしたことも実現できるのかもしれませんね。

1マイル当たり0.44米ドルということは、自動車よりも安くなるということですね。
つまりタクシー会社は、eVTOLを使った方が年間の費用が安くなるということです。ここまでくるとかなり爆発的に普及しそうです。

キーポイントとしては、自動車のように個人所有をベースに事業計画をしていない点ですね。
「空飛ぶ車」が「ライドシェア」という文脈の中で語られる理由はまさにその点に価値があるためなんでしょうね。

最後に

いやー、かなり楽しみですね、「空飛ぶ車」。

Youtubeのコンセプト映像を見るだけでもワクワクしますし、早く来ないかなーと待ち遠しい気持ちになります。
ちょっと怖い気もしますが、空を使って行き来することが日常になれば、街の景色も一変するでしょうね。

地上では自動運転車が走り、上空ではeVTOLが飛んでいる。
ガソリンエンジンはどんどん減っていき、空気はどんどんおいしくなる。

今後の10年でどこまでそうした理想に近づくのか、是非みなさんも一緒に注目してみていきましょう。

それではまた別の記事で!

とびすけ

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